●(72)帰る場所

「イーチィ、ボクだよ! トラッシュだよ!」
ぐったりとしたイーチィを両腕で支えながら、トラッシュは呼びかけ続けた。
生きているのか、死んでいるのかも分からない。
静寂さだけがそこにあった。
声に反応して、イーチイの目が微かに動く。
トラッシュはさらに名を呼ぶ。
睫毛を震わせて、イーチィが目を開いた。
トラッシュは、思わずイーチィに抱きついていた。
「よかった・・・本当に良かった」
イーチィはびっくりした顔でトラッシュを見つめた。
まだ状況が把握できない。
なぜ、自分がトラッシュに抱きつかれているのか。
トラッシュの背中は暖かかった。
心の底から自分を心配し、気遣ってくれた温かいものが伝わってきた。
仲間・・・。
大切なひと。
わたしはマキーナ・サピエンス。
人間ではない。
でも。
わたしにも帰る場所がある。
イーチィは自分の身体に、温かい血が流れているのを感じた。
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