●(46)仇

トラッシュのZガンダムとウラジ・ザースのブラックザクが激しく激突する。
「もうやめてよ、こんなのひどすぎるよ!」
自分の仲間と自分の兄が戦いあうのを、トレミーは悲しく見守るだけだ。
トラッシュにとってはウラジは仇討ちの相手。全身全霊で殺そうともがいているのだ。自分の兄を殺すために。
トレミーはトラッシュの今までの苦しみを知っている。彼をつき動かす原動力となっている感情も。
そしてザース家のひとりとして、兄ウラジの苦しみも理解できる。
だからどうすることもできなかった。
ふたりの信念がぶつかり合うのを、ただ見守るだけだ。
アイゼングラードの最深部で、MS同士が激しくぶつかり合う金属音が響く。
仲間に誓った敵討ちと、戦いに終止符を打たんとするトラッシュだが、さすがにウラジ・ザースは戦闘のプロフェッショナルだった。
搭乗機体がザクとは思えない強さをみせるウラジ。
「これ、本当にザクなのかな・・・」
フリッツが疑うのも無理は無い。
Zガンダムは現時点で最高性能のMSだ。それと互角以上に渡り合って見せるウラジ・ザースのパイロットとしての技能は想像以上のものがあった。
しかし最新鋭のMSを揃えるトラッシュに分があった。
ブラックザクは次第に圧され、ついにトラッシュは勝利する。
ダメージで動けなくなったブラックザクを見下ろしながら、トラッシュは長い旅の終わりを感じていた。これで終わる。僕の仇討ちの長い旅が。
しかし、どうしても分からないことがある。
なぜウラジは旧式の黒いザクに乗って出てきたのだ?
「こうでもしなければ、君は本気を出さなかっただろう?」
動かなくなったザクの中でウラジは言った。
確かにトラッシュは迷ったままでウラジを倒そうとしなかったのではないかとトレミーは思う。トラッシュは優しい子だ。ウラジの悲しい過去、トレミーの兄と知って、それでウラジを倒すことに集中できただろうか?
敵討ちの相手である「黒いザク」が出てきたことで、感情の高ぶるままにウラジを本気で倒そうと思ったことで、この結果の勝利があったといえる。
「・・・わたしは止めてほしかったのかもしれない」
ウラジの言葉は胸に響く。
彼の胸に秘められた、たくさんの重圧と使命のようなものがそこには感じられた。
「まだ終わったわけではないですよ」
ウラジの会話を遮るように、通信に割って入る声があった。
イーチィの顔が強張る。
イーチィを「仲間」と呼ぶ謎の少年、その少年が乗るマスターガンダムがどこからともなく現れた。

























































