●(34)命の恩人を撃て!


トラッシュ達は、アイゼングラードを覆うバリアのエネルギー供給を断つため、大陸と大陸を結ぶ要所で防衛拠点として存在していた砦へと向かう。
しかしそこにはすでに、デスアーミーが放たれていた。相手は人間ではない。襲い掛かるデスアーミーを難なく返り討ちにするトラッシュ達のガンダム。
あまりにも手ごたえがないと感じたその時、水辺がゆらぎ、水飛沫を上げながら丸い球体が飛び出してきた。
球体は空中で展開し、MS形態へと変形する。それは異形のガンダムだった。
デビルガンダム四天王、『笑倣江湖』ウォルターガンダム。宇宙世紀を知っているものなら、その機体をそう呼ぶだろう。しかしトラッシュ達には3本足の水中専用MSとしか見えない。
「・・・誰かと思ったらトラシュじゃないか・・・」
水面を吹き飛ばし歩み寄るウォルターガンダムの搭乗者の声には、聞き覚えがあった。
忘れるはずが無い。レンザー少佐だった。
ダークモビル同盟本拠地で、ナイアールの裏切りの際に、1人戦場に残り犠牲となってトラッシュを逃がしてくれた命の恩人。
彼女は生きていたのだ。
「レンザー少佐! 生きていらしたんですね!」
喜ぶトラッシュ。駆け寄ろうとするトラッシュを、仲間が制する。
様子がおかしい。
そのとき、レンザーは薄笑いを浮かべながら、トラッシュ達に襲い掛かってきた。
なぜレンザーと戦わなくてはならないのか・・・。
ダークモビル同盟本拠地で、身体をはってトラッシュを逃がしてくれたことを思い出す。
戦いたくない。レンザーは戦友であり、命の恩人。誇り高き正義の人なのだ。
「僕はあなたとは戦いたくない! どうして戦わなくてはいけないんだ!」
トラッシュの叫びも空しく、ウォルターガンダムは容赦なくトラッシュにその爪を繰り出してくる。
戦わなくては、死ぬ。ここで負けるわけにはいかない。
「トラッシュ、迷わないで! 迷ったら死ぬ!」
仲間たちはトラッシュを叱咤し、戦闘に集中させる。
ウォルターガンダムのするどい牙をかいくぐり、逆にウォルターにダメージを与える。それでなくても1対多数の戦闘だ。つぎつぎに被弾する傷を感じながら、まるで戦闘を楽しむかのように突然レンザーは笑い出した。
「戦いたくない、だと? お前たちはこんなにも戦える。戦えているではないか!」
レンザーの問いに戸惑うトラッシュ。
戦争を嫌いだと言いながらも、結局は戦争に加担している自分。他人より上手くMSを操縦できることに任せ、対する敵を叩きのめしている自分。
何かがおかしい。こんなことを望んでいたのか?
仲間はそんなトラッシュに喝を入れる。
「惑わされないで! ここで死んだらなんにもならないよ!」
「・・・わかってる! 僕達は前に進むしかないんだ!」
決意を秘めた攻撃が、ついにウォルターガンダムを仕留める。
倒れ伏したウォルターガンダムの中で、ようやくレンザーは正気に戻ったようだった。
しかし、その命の灯火は消えかかっていた。
「どうしてこんなことに・・・」
トラッシュは激高する。この手で、自らの手でレンザーを殺めてしまった。
かって自分を守ろうと、その命を、身体をはった人を。自分を大切だと言ってくれた、大切な人を。
爆発するウォルターガンダム。
炎の赤い海に照らされて、トラッシュは泣きじゃくった。
人を殺すっていうことは、こういうことなんだ。
戦争っていうのは、大切な人を失うことなんだ。

























































