●(26)忘れられた村


トレミーが連れてきた場所は、人気の無い村だった。
冷たく降りしきる雪が、もの悲しい寂しさをかもし出す、悲しい村。
そしておびただしい墓の数。それだけの死の予感がそこには立ち込めていた。
住む場所を追われたザース一族の隠れ家。それがこの村の正体だった。
Gシステムを作り人類を繁栄させ、Gシステムが暴走したことで人類を破滅に追い込んだザース家。
ザースの一族は、人知れずこの辺境でひっそりと隠れ住み、誰も知らないまま生き、死んでいった。
「この場所は兄さんも知らない」
心なしかトレミーは元気がなかった。
死んだと思っていたトレミーの兄・ウラジも知らない場所。確かに安全な場所だった。
空元気を出して元・自分の家に案内したトレミーは、扉に鍵がかかっているのを発見する。
そこには、幼い頃に世話になったじいやがいた。彼は一度は村を離れたものの、トレミーの両親が眠るこの場所を離れることに安心できず、もどってきていたのだ。
思いがけない再会に喜ぶトレミーとじいや。
やるべきことは多かったが、まずは休息が必要だった。
疲れがピークに達しているイーチィと、精神的なショックを受けているトレミーを休ませ、トラッシュは暖炉で暖をとりながら、じいやとしばし会話をする。
じいやに今までの経緯を話すトラッシュに、じいやはトレミーの過去を話しはじめる。
かってGシステムを発明したザース一家だが、Gシステムがひきおこした「大破壊」によって、人類の敵のように忌み嫌われていた。「大破壊」から数十年経ってもそれは同じ。そして幼かったトレミーの目の前で父親は民衆によって惨殺されたのだ。ただザースの名をひいているという理由だけで。
どんなに名を隠しひっそりと暮らしていても、狂気の民衆はザース家を追い続け、じいやはトレミーと母親を連れて必死に逃げた。トレミーの兄・ザースは、逃げ延びる途中、母親とトレミーを守るために命を落としていた。その後逃げ延びた一族は、この安息の場所に辿り着いたのだ。
しかし逃げ延びることができたトレミーの母親も、やがて息をひきとった。残った人間も、ザースの名を捨てて世界中に散っていった。
そしてこの雪に覆われた無人の村だけが、ただここに残った。
「ウラジ・ザースは生きています。そして世界を手に入れるために戦争をはじめたんです」
ウラジが生きていたこと、慕っていた兄と戦っているというトレミーに驚くじいや。
じいやはまた、トラッシュが若い頃のウラジに似ていると呟いた。正義感が強く、なんでもひとりで背負い込む性格。それがとても似ているという。
話し終えたトラッシュが休憩をとろうと自分の部屋に向かった時、トレミーの部屋からすすり泣く声が聞こえた。
部屋に戻ると、イーチィはまだ起きていた。
暗闇の中で、トラッシュとイーチィはこれからのことを相談する。
トラッシュはトレミーを置いて、イーチィと2人だけで出発することに決めた。
兄妹で戦いあうなんて辛すぎる。
かって大所帯だったパーティーは、6人から、いまや2人だけになっていた。
寂しい空気だけがそこにあった。
戦いの炎は全てを奪い去った。
信じていた仲間も、絆も、明日の希望さえも。

























































